[注意] 情報通信の天地は複雑怪奇な様相を見せ,要は,以下に示すうだうだは,5年のうちに全くのロストテクノロジーとなってしまいました。携帯電話の普及と,それに伴う公衆電話の衰退。そして,マイノリティであったICカード式携帯電話は全廃の憂き目を見て,赤外線による接続も過去のおはなし。そういえば,IrDAも最近見なくなりましたね。
いくつか並んでいる電話ボックスのうち1つだけ空いている。これ幸いとボックスに入る。いざカードを入れようとしたら差込口がない。あるいはそれらしいところに入れてみるのだが,吸い込んでくれない。どうもほかの電話と違うな,と辺りを見回してみると,「ICテレホンカード専用」などと書いてある。要はあなたは「はずれ」を引いてしまったのである,隣のボックスの人が一部始終を観察していなかったことを確認し,すごすごとボックスから退出する,なぁんて経験はないだろうか。
ICテレホンカード(以下ICカードと略)対応の公衆電話機は確実にその地歩を固めつつあるのだが,見る限り肝心のICカード自体が一般に浸透している様子は全くない。
ICカード化されたメリットが見えにくい。強いて言えば,カードに電話番号を記憶させられること,くらい。これもICカード対応電話機を使用しないと登録が出来ない。一度はメモを持って電話ボックスに行かなければならないわけである。家庭用の番号登録機などがあれば話は別であろうが,そもそもICカード導入の目的が偽造防止という点を鑑みると,そんなものは絶対に出てきそうもない。加えてICカード専用タイプが硬貨併用機を数の上で大きく上回っている。ために,利用率が極端に低いということになっているようだ。(2004/2追記:ほとんどが併用型になりました。ただ,それだけにカードの利用率が頭打ちのような気が。そもそも,公衆電話自体が,携帯電話に押されて壊滅状態)
ところで,この電話にはもう一つ,通常の公衆電話にはない機能がある。それが,今回紹介する赤外線通信機能である。
実は,赤外線通信機能を持った電話機は,以前から存在していた。ISDN対応の,通常の磁気カード式公衆電話と同じ形で,ピンクの帯を巻いているものがそれである。ただし,これは東京地区で試験的(?)に導入されただけで,全国的な普及を見るには至らなかった(今後普及するかもしれないけれど,その可能性は低そうだ)。ところが,ICカード対応の電話機は,NTTの方針もあってか,全国的に,かなりの勢いで設置されている。従って,旅先でインターネットに接続する,などという場合,かなり重宝しそうである。
実際,ICカード対応公衆電話でのインターネット接続には,いくつも利点がある。まず,モデムが不要であること。基本的に,持ち運べる重さのコンピュータ(となるとB5以下のノートパソコンか)は,拡張性が低い。内蔵モデムがついていないことも多いので,仕方がなく,カードモデム(やUSB接続モデム)をしなければならない。当然,出費は増えるし,バッテリー運用時には電力を消費してしまう。しかし,赤外線インタフェイスなら,最近の機種なら必ずついている。そして2点目は,機器を増設しなくても,64kbpsのISDN回線が使用できるということ。普段アナログ回線を使っている人ならば,外にいる方が快適な環境が得られるのである。3つめは,電話が空いている,ということ。先述の通りICカード専用の電話機は利用率が低い。ネット接続用としてICカードを購入してしまえば,後ろの列を気にせずにメールをチェックしたり,webを見たりすることが出来る。
そもそも,一般に利用率が低いからといって,それを使っていけない,などということはないはずである。世の大勢がどう思おうと,便利なものは便利である。空いているのをいいことに,ICカード対応公衆電話を使ってしまおう,ということで,以下,その方法を概説しよう。
まず,必要環境である。
条件がそろったら,まず,ドライバをダウンロードする。NTT東日本かNTT西日本のWebサイトの,公衆電話のページにドライバがあった,
...はずなのだが,いつの間にかリンクが切れている。検索をかけても見つからない。私の手元にはちゃんとあるのだけれど,まさか,NTTの提供していたファイルを勝手にここで配るわけにも行かないし,どうしよう,と思っていたが,NTT(分割前)で「赤外線」をキーに検索したら,見つかった。いつなくなるかわからないので,お早めにNTTの赤外線通信のページ(Dead Link)でドライバをダウンロードすべし。
付記 2002/11現在,NTT東日本の公衆電話のページに移設されたようです(赤外線通信機能)。同社の配慮に感謝します。これでしばらくは安泰でしょう。 もうだめです。
Win9xであれば,ドライバのインストールの手順は通常の機器の場合と同じ。念のため記しておくと,
あとは,ダイアルアップネットワークの設定を通常どおり作成するだけ。モデムを先程選んだ「IRインターフェイス付公衆電話機PPP-SYNC 64kbps」にすることと,接続先を,最寄りのISDN対応のアクセスポイントに設定することを忘れないように。アナログ回線専用のポイントではつながらない。あちこちによく出かけるのであれば,全国のアクセスポイントのリストを用意しておくといいかも知れない。発信元はどこになるのかわからないので,所在地情報の設定を市外局番なしにしておくのも一つの方法。仮に市内のアクセスポイントに接続するときに市外局番からダイアルしたって,誰も怒りません(たぶん)。
ここまで設定できたら,コンピュータを片手にいざ出陣。え? 片手では持てない? それはコンピュータが重すぎるか,腕力が足りないか,あるいはその両方か。電話ボックスの中には,コンピュータを置く場所はないから,片手で持てないとつらいなぁ。
電話の前に来る前に,ダイアルアップネットワークから該当の接続を起動しておき,[接続]ボタンを押すだけの状態にしておくと,電話占有時間を最短に出来る。ICテレホンカードをスロットにつっこみ,電話機の[データ通信]のボタンを押して赤外線インタフェイスを電話機に向ければあとは接続するだけなのだけれど,ここのところがちょっとした問題になる。コンピュータによって赤外線インタフェイスの場所が異なっているからである。大別すれば,左側,奥,右側の3種類になるが,このうち,奥にインタフェイスのあるタイプは,ボックスでない開放型の電話で使いやすい。電話帳数冊か厚めの鞄を台にしてその上にコンピュータを置けば,自然とインタフェイスが正対する。また,右側にインタフェイスがある機種では,ボックス型の電話が使いやすい。ボックスの電話は,大抵左奥隅に電話機があり,右側に止まり木(というか腰掛け)が設置されている。だから,この腰掛けに座り,左手で機械を持ち,右手で操作を行う形にすると,インタフェイスが正対しているはずである。ただ,これを開放型の電話ですると,左隣の人の横顔をまじまじと見つめることになり,嫌がられるかも知れない。
問題はインタフェイス左側設置タイプで,開放型だと右隣を見つめてしまうし,ボックスだと,窮屈だが左手前隅に体を置かなければならない。右利きの人は手の位置が逆になって使いにくいかも知れない。
体勢が整ったら,今度こそ[接続]ボタンを押す。そうすると,驚くほどはやく接続できるはずである。サーバの種類の設定で,ネットワークへのログオンを外しておくと更にはやく接続できる。アナログモデムとの最大の差は,ここかもしれない。
通話中は,インタフェイスの向きにだけ注意していればよい。距離は1m位までは可,と言われているけれど,1.5m程度までは大丈夫のようだ。ただし,あまり離れすぎると,周囲から不審の眼を注がれることになる(実話)。
終わる際には,電話機から離れていけば切断されるから,そこで再接続しなければよさそうだが,これはやめておいた方がいい。というのも,カードを忘れてしまう可能性があるから。ICカード式電話機は,カードを差し込み口に差しておくだけで,機械の中に吸い込まない。だから,磁気カードのように,機械からにゅっと出てくることもないので,ついつい回収するのを忘れがちになってしまうのである。
逆に,カードをさっと抜いて接続を切る,という方が恰好いいかも知れない(端末側に再接続のプロンプトが出てきてしまうこともあるけど)。切断には他に,端末側から接続を切る従来の方法と,電話機の[データ終了]のボタンを押す方法とがある。
かくて,少しの手間と,少しの周囲からの好奇の視線を我慢すれば,かなり快適にインターネットに接続できるのである。ICカード対応機が混雑しない程度に,利用してみてはいかがだろうか。