今回に限り,殆どの写真には,より大きいサイズの写真へのリンクを施してあります。多くのブラウザでは,クリックすることにより見られます。
雪とは兎角厄介な代物である。
と,至極当たり前なのだけれど,こういう条件が重なることが,過剰に堆積した降雪を除去する作業,いわゆる雪掻きを一層困難にしている。
こと,鉄道に限っても事情は変わらず,雪掻きは非生産的にも拘わらず,労力を要する作業として相応の配慮がなされている。その最たるものが,除雪列車である。人目に付かず,しかも,欠くべからざる列車。年に数回雪掻きをするためだけに走る,裏方中の裏方である。
昔は,貨車に分類される黒い車輛を機関車が押していて,マックレー型とか広幅型とか,種類も多かったのだが,現在では,種類はラッセルとロータリーの2種類,JRでは,いずれもディーゼル機関車と一体になったスタイルである。
ラッセル式は,線路内の雪を掻き分けて進路を確保するタイプで,JRでは現在,DD15,DD16-300,DE15,DD18の4形式が稼働している。ラッセル式の除雪列車を排雪列車と謂っているようだ。
もう一方のロータリー式は,敷地内の雪を掻き集め,線路外に抛り投げるタイプで,ラッセル車が押しのけた雪の壁を拡げる役割を担っている。こちらは,DD14,DD19,DD53の3形式が存在する。ロータリー式の除雪列車を特殊排雪列車と謂う。
先日,只見線(新潟県・小出〜福島県・会津若松)の特殊排雪列車を見る機会があった。平成13年1月20日,長期予報では降らないはずの雪が,1月からなぜか降り続き,数日前から只見線は不通の状態にあって,懸命の除雪作業が行われていた。
今回作業にあたっていたのは,ロータリー式除雪機関車DD14型の328号機と,補機のDE10型1679号機である。DD14型は,主機を2基搭載しており,片方を駆動用,片方を除雪用として使用し,単独で除雪作業を行えるが,補機に押してもらい,両方の機関を除雪用に使用することにより作業効率が向上する。このためDD14型同士,または,DE10型などを補機として使用することが専らである。
小出を7時20分過ぎに発車した除雪列車は,極めてゆっくりとした速度で進む。途中の立体交差で待ち構えていると,音はすれども姿は見えず。やがて遠くに,投げ出された雪が描く抛物線が見え,それからかなり経ってから,列車が姿を見せる。
翼が切り込みを入れると,雪はゆっくりと線路上に崩れ落ちる。その雪はロータリーの大きな開口から呑み込まれ,上の排出口から一気に吐き出される。唸るエンジン。踟躊して進まぬ様は,雪の多さと重さを語っている。幸い,この日だけは晴れていた。今日のうちに除雪をしておく必要がある。
人が歩いているくらいの速さで,列車が大白川に着いたのは既に13時過ぎ。ここから六十里越を経て只見に至る間が一番雪深いところである。が,並行する国道はこの先冬季通行止め。車で伴走してきた我々は,黙って前途を思い遣りつつ見送るしかなかった。
DD14の除雪作業(動画)Windows Media 1.33MB
雪と闘っているのは鉄道ばかりではなかった。道路は夜を徹して除雪が行われている。新潟県だけでその延長は計り知れない。まして福井から北海道まであわせたら幾許か。人もまた然り。この時点での積雪は200cmを遙かに超えている。屋根に伸しかかり,門に立ちはだかって出入りを禦ぐ雪を何とかするには,やはり人の力に頼るほかない。
東の海のほとりで,霜柱を踏みつつ,青く晴れ上がった空に寒い寒いと不平を言っている身としては,少しく考えを改めなければならぬと思った次第である。
参考までに,雪関係のリンク集。